日経平均1,889円安、全面安。「朝安・急回復」が通じなかった日をどう受け止めるか【西村剛】

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西村剛です。

9月2日(水)、日経平均は前日比1,889円安の64,325円で引けました。大幅な3日続落で、8月4日以来の安値水準です。

ここ数日、私は「朝方に大きく下げても午後には戻る」という相場の底堅さをお伝えしてきました。8月31日は1,500円超安から高値引け、9月1日も735円安から急回復。2営業日続けて、朝の悲観が午後には和らぐ展開でした。ところが9月2日は、その底堅さが通じませんでした。終日売りに押され、戻すことなく、ほぼ安値圏で引けたのです。この日の相場が何を意味するのか、冷静に整理します。

● 9月2日、何が起きたのか

9月2日の下落は、これまでの下げとは質が違いました。一言で言えば、逃げ場のない全面安です。

東証33業種は、すべてが下落しました。上昇した業種は1つもありません。東証プライムでは、値下がり銘柄が1,436と全体の9割を超えました。半導体やハイテクといった一部の銘柄だけが売られたのではなく、景気敏感株も、内需株も、ほぼすべてが売られたのです。前日まで9日続伸していたTOPIX(東証株価指数)も、100ポイント安と大きく反落しました。

この全面安を引き起こしたのは、複数の深刻な材料が同時に襲ってきたことです。順に見ていきます。

● 引き金となった「イラン攻撃」と原油高

最大の引き金は、中東情勢の急激な悪化です。

米軍の中央軍が、イランの革命防衛隊を標的とした攻撃を開始したと発表しました。これまでも中東情勢は相場の重しでしたが、実際に軍事攻撃が始まったことで、地政学リスクが一気に現実のものとなりました。

この攻撃を受けて、原油価格が急騰しました。原油先物は、一時1バレル92ドル台まで上昇しています。イランは世界有数の産油国であり、原油の重要な輸送路であるホルムズ海峡もこの地域にあります。中東での軍事衝突は、原油の供給に直接影響するため、価格が跳ね上がったのです。原油高は、インフレの再加速と、企業のコスト増による景気の下押しという、2つの悪影響を市場に意識させました。

● もう一つの重し、国内金利が30年ぶりの高水準に

9月2日の相場で、私が最も注目したのは金利です。

この日、日本の長期金利が3.015%まで上昇しました。これは1996年9月以来、およそ30年ぶりの高い水準です。長期金利が3%を超えるという事態は、多くの投資家にとって、経験したことのない領域です。

金利上昇は、これまで何度もお伝えしてきたように、将来の成長を期待して買われてきた高PER(株価収益率)のハイテク株にとって、大きな逆風です。加えて、金利が上がれば、株式以外の運用先である債券の魅力が相対的に高まり、株式から資金が流出しやすくなります。原油高によるインフレ懸念が、さらに金利の先高観を強め、それが株安を招く。この悪循環が、9月2日の全面安の背景にありました。

日経電子版は、この日の相場を「世界金利高でよぎる、うたげの終わり」と表現し、世界的な金利上昇のあとに株価が暴落した1987年の「ブラックマンデー」の再来を懸念する声が出始めた、とまで報じています。それだけ、9月2日の下落は、市場に強い警戒感を残したということです。

● この下落を、どう受け止めるべきか

大きく下げた日ですので、不安を感じている方も多いと思います。冷静に判断するための材料を、順に整理します。

まず、これまでの下げと9月2日の下げの違いを、正確に理解することが大切です。8月後半からの下げは、金利上昇による「半導体を中心とした選別的な下げ」でした。半導体が売られる一方で、内需やバリュー株は買われ、TOPIXは上昇を続けていました。だからこそ、朝安からの急回復が繰り返されたのです。

ところが9月2日は、イラン攻撃という地政学リスクと、原油急騰、そして30年ぶりの金利高が同時に襲い、逃げ場のない全面安になりました。選別している余裕がなく、いったんリスクを減らそうという売りが、市場全体に広がったのです。この違いは、しっかり認識しておく必要があります。

一方で、過度に悲観すべきではない点もあります。全面安のなかでも、三菱UFJ(8306)などのメガバンク株は底堅さを示しました。金利上昇は、銀行にとっては貸し出しの利ざや拡大につながる追い風だからです。すべてが一様に売られたように見えても、金利上昇という環境で恩恵を受ける銘柄は、相対的に底堅く推移しています。金利が上昇する局面で何が強いのか、9月2日はそのヒントも示していました。

また、下落の主因が地政学リスクという「外部要因」である点も重要です。日本企業の業績が悪化したわけではありません。中東情勢が落ち着けば、原油高への警戒が和らぎ、相場が戻る可能性も十分にあります。ただし、軍事衝突の行方は誰にも予測できず、原油高と金利高がどこまで続くかも不透明です。ここは慎重に見極める必要があります。

● こういう局面で、何をすべきか

相場が大きく崩れたときに、意識していただきたいことを3つお伝えします。

1つ目は、慌てて投げ売りをしないことです。18年間相場を見てきて、最も避けるべきなのは、恐怖に駆られて底値で売ってしまうことだと断言できます。9月2日のような全面安の日は、市場全体がパニック的に売られるため、優良な銘柄まで巻き込まれて下げます。ここで感情的に売ると、その後の反発を取り逃がすだけでなく、安値で損失を確定させてしまいます。

2つ目は、金利上昇に対する備えを、あらためて確認することです。9月2日の下落の核心は、原油高と、それがもたらす金利上昇です。当面、この金利というテーマが相場を支配する可能性があります。金利上昇に弱い高PERの成長株の比率が高い方は、金利上昇に強いメガバンクなどとのバランスを見直すことも、一つの選択肢です。

3つ目は、9月相場のリスクを冷静に受け止めることです。9月18日には日銀の金融政策決定会合が控えており、国内金利が30年ぶりの高水準にあるなかで、金融政策への注目はさらに高まります。9月は季節的に相場が荒れやすいという経験則もあります。9月2日の全面安は、その9月相場の難しさを、初日から突きつけた格好です。

● 最後に

9月2日は、イラン攻撃、原油急騰、30年ぶりの金利高という悪材料が同時に襲い、逃げ場のない全面安となりました。ここ数日続いた「朝安・急回復」の底堅さが通じなかったことは、相場の局面が変わりつつある可能性を示しています。

ただ、こういうときこそ、冷静さが問われます。下落の原因が地政学リスクという外部要因であること、企業業績そのものは崩れていないこと、そして金利上昇の恩恵を受ける銘柄は底堅いこと。これらの事実を踏まえれば、9月2日の下げに、ただ恐怖するだけの局面ではないとわかります。

大切なのは、感情ではなく事実とルールで動くことです。中東情勢と金利、原油の動向を注意深く見極めながら、慌てず、自分の投資ルールを守る。相場が荒れるときほど、その基本が、あなたの資産を守ります。しばらくは神経質な展開が続く可能性があります。無理に大きな勝負をせず、状況を見極める姿勢で、9月相場に臨んでいきましょう。

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西村 剛

Yahoo!ファイナンス 株の達人・証券アナリスト兼ファンドマネジャー・AllAboutガイド。 現在、30名の一流システムトレーダーを育成する特別プログラム講師に従事 (過去にも120名以上が一流システムトレーダーとして成長した実績がある) システムトレードを、全くの初心者でも分かりやすく、やさしい言葉を使うことから、受講生の成長度の高さや信頼を多く集める、教え上手な専門家。