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西村剛です。
9月4日(金)、日経平均は前日比806円高の65,020円で引けました。5営業日ぶりの大幅反発で、節目の65,000円を回復しました。
9月2日の1,889円安という全面安から、市場が立ち直れるかどうか、私も注目していました。9月3日に下げ止まりの兆しが見え、そして9月4日、日経平均は800円を超える大幅反発となりました。ここ数日の下落に、ひとまず歯止めがかかった形です。ただ、この反発の中身をよく見ると、手放しで喜べない死角も見えてきます。9月4日の相場を、丁寧に読み解いていきます。
● 反発の主因は「米金利の低下」だった
9月4日の大幅反発の起点は、前日9月3日の米国市場です。
前日、米国でFRB(米連邦準備理事会)のウォラー理事が、これまでのタカ派的な姿勢、つまり利上げに前向きな姿勢を緩めるような発言をしました。これを受けて、年内の利上げリスクが後退するとの見方が広がり、米長期金利が低下しました。金利の低下を好感して、前日の米国市場では大型ハイテク株が大きく買われました。
この流れが、9月4日の東京市場に波及しました。ここ数日、日本株を苦しめてきた最大の要因は、原油高とインフレ懸念による日米の金利上昇でした。9月2日の全面安も、30年ぶりの金利高が引き金でした。その金利の上昇が、ウォラー理事の発言をきっかけに一服したのです。金利という重しが軽くなったことで、これまで金利上昇に最も苦しめられてきた銘柄が、勢いよく買い戻されました。
● 主役は、やはりソフトバンクグループだった
9月4日の反発をけん引したのは、ソフトバンクグループ(9984)です。
同社の株価は、9月4日に一時12%も上昇しました。日経平均への寄与度が大きいこの1銘柄だけで、日経平均をおよそ470円分も押し上げています。さらに、アドバンテスト(6857)を加えた2銘柄で、日経平均を669円分押し上げました。9月4日の806円高のうち、実にその大半を、このわずか2銘柄が生み出した計算になります。
ソフトバンクグループやアドバンテスト、キオクシア(285A)といった銘柄は、いずれも将来の大きな成長を期待して買われる、PER(株価収益率)の高い値がさ株です。こうした銘柄は、金利が上昇すると将来の利益の価値が目減りするため、真っ先に売られます。9月2日の全面安でも、これらが大きく売られました。逆に、金利が低下すれば、真っ先に買い戻される。9月4日は、まさにその「金利低下による値がさ株の買い戻し」が、相場を押し上げたのです。
加えて、日経平均が9月3日までの4日続落で2,200円近く下げていたことも、反発を後押ししました。売られすぎた反動を狙った押し目買いや、自律反発を見込んだ買いが入りやすかったのです。
● 806円高でも「死角」がある
ここからが、9月4日の相場で最も冷静に見るべき点です。日経平均は806円高と大きく上昇しましたが、その中身には死角があります。
市場全体を映すTOPIX(東証株価指数)は、わずか1.19ポイント高と、ほぼ横ばいで引けました。日経平均が1.26%も上昇したのに対し、TOPIXの上昇率は0.03%にとどまったのです。しかも、取引時間中のTOPIXは、マイナス圏で推移する場面が多くありました。東証プライムの値上がり銘柄数は671、値下がり銘柄数は821で、実は下げた銘柄のほうが多かったのです。
これは何を意味するのか。9月4日に大きく上がったのは、ソフトバンクグループやアドバンテストといった、ごく一部の値がさ半導体株だけだった、ということです。それ以外の多くの銘柄は、むしろ売られていました。日経平均という指数は、これら一部の値がさ株に押し上げられて806円高になりましたが、市場全体の実態は、それほど強くなかったのです。
この「日経平均高・TOPIX横ばい」という構図は、7月以来、何度も見てきた二層構造そのものです。9月2日の全面安、9月3日の全面的な下げ止まりを経て、9月4日は再び、半導体という一部の主役だけが買われる相場に戻りました。相場の裾野が広く買われた健全な上昇ではなく、あくまで一部の銘柄に牽引された上昇である点は、しっかり認識しておく必要があります。
● 円高が輸出株の重しになっている
9月4日にTOPIXが伸び悩んだ背景には、もう一つ理由があります。円高です。
このところ、為替相場は円高方向に進んでおり、円相場は7月末の協調介入後の高値に接近しています。円高は、海外で稼いだドルを円に換えるときの金額が目減りするため、自動車をはじめとする輸出関連企業にとっては逆風です。9月4日も、円高進行を受けて自動車などの輸出関連株が軟調となり、これが相場全体の上値を抑えました。
金利低下で半導体株は買われるものの、円高で輸出株は売られる。この綱引きが、9月4日の「日経平均は大きく上げたが、TOPIXは横ばい」という、ちぐはぐな結果を生んだのです。
● この反発を、どう受け止めるか
9月4日の806円高を、相場の本格的な回復と見てよいのか。私は、まだ慎重に見るべきだと考えています。理由を、3つの視点でお伝えします。
1つ目は、上昇の中身が偏っていることです。すでに述べたように、9月4日に買われたのは一部の値がさ半導体株だけで、市場全体では下げた銘柄のほうが多い状態でした。相場全体に買いが広がる「全面高」であれば、底入れの信頼度は高まります。しかし、一部の銘柄だけが牽引する上昇は、その銘柄が息切れすれば、相場全体も失速しかねません。上昇の質としては、必ずしも強いものではないのです。
2つ目は、反発の要因が「外部要因」であることです。9月4日の反発は、ウォラー理事の発言による米金利低下という、外部環境の変化が起点でした。日本企業の業績が良くなったわけでも、日本独自の好材料が出たわけでもありません。外部要因で上がった相場は、外部要因が再び変われば、簡単に下げに転じる可能性があります。米金利が再び上昇すれば、9月4日に買われた半導体株が、また売られることも十分に考えられます。
3つ目は、金利と原油、円高という重しが、根本的には解消していないことです。9月4日は金利上昇が一服しましたが、原油の高止まりや、日銀の利上げ観測という構図が消えたわけではありません。円高も、輸出株の重しとして残っています。これらの根本的な懸念が晴れない限り、相場が一本調子で上昇に転じるとは考えにくい状況です。
● ここからの相場に、どう臨むか
9月2日の全面安、9月3日の下げ止まり、そして9月4日の大幅反発。この3日間で、相場は激しく揺れ動きました。この乱高下から、意識していただきたいことをお伝えします。
まず、日経平均の上げ幅だけで判断しないことです。9月4日は806円高という大きな数字でしたが、その実態は一部の値がさ株による押し上げでした。指数の華やかな数字の裏で、市場全体はそれほど強くなかった。この「中身」を見る習慣が、今の相場では特に重要です。自分の持ち株が、9月4日に上がった値がさ半導体株のタイプなのか、それとも上がらなかったその他の銘柄なのかを、冷静に確認してください。
次に、外部要因に左右される相場であることを、頭に入れておくことです。ここ数日の下落も反発も、突き詰めれば米国の金利動向が起点です。当面は、この金利という外部要因が相場を支配する展開が続く可能性があります。金利が下がれば半導体株が買われ、上がれば売られる。この構図を理解しておけば、相場の動きに振り回されずに済みます。
そして、9月18日の日銀会合に向けた警戒を怠らないことです。9月4日に金利上昇が一服したとはいえ、日銀の利上げ観測は根強く残っています。9月半ばにかけて、金融政策を巡る思惑が、再び相場を揺らす可能性があります。9月は季節的にも相場が荒れやすい月です。9月4日の反発で安心しきるのではなく、こうしたリスクへの備えを続けることが大切です。
● 最後に
9月4日は、米金利の低下を追い風に、日経平均が806円高と5日ぶりに大きく反発しました。ここ数日の急落に歯止めがかかったことは、ひとまず前向きに受け止めてよいでしょう。しかし、その上昇は一部の値がさ半導体株に牽引されたものであり、TOPIXは横ばい、市場全体では下げた銘柄のほうが多いという死角もありました。
相場が大きく動く局面では、一つの数字に一喜一憂せず、その中身を冷静に見極めることが何よりも大切です。9月4日の806円高という数字だけを見て安心するのではなく、その上昇が一部の銘柄に偏っていること、外部要因に支えられていること、そして金利や原油、円高という重しが残っていることを、しっかり認識しておく。そのうえで、業績の裏付けのある銘柄を軸に据え、慎重に相場と向き合っていく。この姿勢が、変動の大きい9月相場を乗り切る鍵になります。
今週も一週間、相場と向き合ってきました。週末は、ここ数日の激しい値動きを整理し、来週の相場に備えてください。金利、原油、円高、そして日銀会合。来週も注目すべき材料が続きます。焦らず、冷静に、9月相場に臨んでいきましょう。
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西村 剛
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