恐るべきカーブフィッティングの罠(その1)



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夢幻です。

前回のメルマガでは『システムの不可逆性』のうち3つの事例を紹介しました。

1.マーケットインパクト
2.スリッページ
3.資金管理(シグナル重複の際の仕掛け余力不足によるトレード機会損失等)

これらは、実際にトレードしてみると目に付きやすく、またセミナーなどでも解説される事例ですので、気を付けている方も多いと思います。

今回は、カーブフィッティングについて説明します。

カーブフィッティングという事象については、認識している方が殆どでしょう。

しかし、どのような仕組みで起きているかは、あまり語られた事が無いのではないでしょうか??

今回は簡単なサンプルケースを使って、よくあるカーブフィッティングの仕組みを説明します。

例として

・検証期間10年間
・総トレード回数3000回、
・平均損益0.55%、
・合計損益1650%

の売買ルールがあると仮定します。

平均損益をもう少し高めようと調査を行ったところ、株価位置の値によって損益率に差がある事がわかりました。

さらに、株価位置の値が大きいほど損益率が高い事がわかりました。

そこで、株価位置を

90%以上~
80%以上~
70%以上~
・・・
20%以上~
10%以上~

とし、それぞれの検証結果毎に、トレード回数、合計損益、平均損益をまとめてみました。
それが本文上の表①です。

やはり、株価位置が高いほうが損益率が高い事がグラフからも読み取れます。

さて、多くの方は、このグラフを見て、どの値を採用するでしょうか?

・・・

90%以上?

いやいや、90%以上は損益率が2%と高いですが、トレード回数が100回と少なすぎます。これはパス。

同様に、80%以上としても、トレード回数は300回と90%以上よりもかなり増えました。
平均損益も1.93%とそこまで大差ないので、90%よりは良さそうです。

70%以上・・・トレード回数は600回とそれなりに増え、平均損益も1.87%とまだそこまで変わりません。

60%以上・・・トレード回数は1000回と元の総トレード回数の1/3を越えました。回数としては十分といえそう。
しかし、平均損益は0.8%と大幅ダウンです。

以下、株価位置を下げていき、検証結果を見ていくと、トレード回数は増えていくものの、平均損益は逓減するばかりであまり成績は改善しないようです。

結果、70%以上を採用する方が殆どではないでしょうか??

この場合、

トレード回数600回
合計損益1120%
平均損益1.87%

となります。

逆に、70%未満の場合(切り捨てるトレード要素)は、

トレード回数=3000-600=2400回
合計損益=1650-1120=530%
平均損益=530/2400=0.22%

となります。

1トレードあたりの損益は0.22%とプラスですが、平均損益はそこまで大きくないですし、もともとの平均損益が0.55%だったので、これらはあまりトレードしても利益の上乗せは少ないと言えます。

このような背景から株価位置70%以上の値を選択する事になると思います。

実はこのように、多くの人は

「株価位置の変化率に対して、損益の変化率がより大きく動く」

付近の値を選ぶ傾向があります。

今回のケースですと、株価位置を70%→60%と動かしたときの平均損益の変化率は1.07%でこれは最も大きい値です。

何故かというと、自分の改善したい項目・・・例えば、平均損益をより大きくしたいと考えているからです。

(これは以前の復習用メルマガで説明したとおりです→https://sys-tatsu.com/investmentnews/?post_type=blog&p=9940 )

このように数字つまり、平均損益の大きさばかり目が行ってしまうと、必然的に平均損益の変化率の大きい値を選んでしまうのです。

で、このような値を選ぶとどうなるか、

今回は10年分のデータでしたが、このトレードを3000回と言わず、数万、数十万とこなして、

『十分に損益が平均化された状態』

の平均損益は②の通りとなりました。

平均損益が大きい値の方が平均損益が高い傾向には変わりませんが、損益の差のバラつきは少なくなっています。

この場合、70%以上で仮に3000回トレードした場合の、本来の平均損益は0.87%になっています。

つまり、検証上よりも1%も平均損益が低い結果が出る事になります。

平均損益が1.87%もあるのに実際運用したら0.87%しか利益が出ない、ここまで差があるとなかなか利益が出ないなと感じるのではないでしょうか?

結果、どのような事が起きるかというと

・検証結果より実トレードの方が平均損益が低くなる。

・運用を始めると、損益曲線(グラフ)が垂れてくる。

・検証上(10年間で最大)のドローダウンを更新する。

このような事が起こる事になります。

これは、少し極端な例で、実際のストラテジー設計の現場で良く起こっている事です。

10年という期間で総トレード数も3000回もあってもトレード要素にバラつきがあった事からこのような事は起こりえるのです。

何故このような事が起こってしまったのか?

その理由を次回詳しく解説します。

お楽しみに!

ー夢幻

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夢幻

平均年利100%以上を叩き出し、今なお資産を増加し続ける現役の専業システムトレーダー。 会社員時代は投資教育会社の統括マネージャーとして、成果を挙げた個人投資家やプロトレーダー、ファンドマネージャーなどに数多く会い、様々な実践トレードの手法を学ぶ。 斉藤正章氏や西村とも古くから交流があり、「システムトレードの達人」を開発当初から愛用している。 退職後は、当時の資金500万円のうち100万円を設備投資に使い、資金400万円で専業トレーダーに転身。 トレードの利益から生活費を捻出するため、当初は、資産がなかなか増えていかない状況が続くも、「システムトレードの達人」を使い独自の投資手法を構築することで、本格的にトレードを開始した2013年以降は年利回りが50%下回ることがないという安定した実績を残している。