恐るべきカーブフィッティングの罠(その6)【夢幻】



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夢幻です。

今回はマルチストラテジーのカーブフィッティングについてお話します。

マルチストラテジーとは複数のストラテジーを組み合わせ、疑似的に1つの複合ストラテジーとして機能させる事です。

基本的には、マルチストラテジーに含まれる個々のストラテジーは異なる特性を持ちます。

例えば、

A.デイトレ買い
B.スイング買い
C.デイトレ売り

こんな感じです。

基本、どのストラテジーにも得意な相場と、苦手な相場がありますから、それらを平行して使う事で、日々の損益を安定させる効果があります。

この場合、AとBは時間軸が異なる類似型のストラテジーといえますが、AとC、BとCは売りと買いという逆の特性を持ち、補完関係にあると言えます。

マルチストラテジーの設定では様々な検証が可能です。

・ストラテジーの順番(順列)
・各ストラテジーの仕掛けごとのポジション量
・各ストラテジーのレバレッジ

等々

私が初めてマルチストラテジーの検証を行ったときに、重要だと思ったのがストラテジーの優先順位です。

このケースですと、優先順位の高いものから

A-B-C
A-C-B
B-A-C
B-C-A
C-A-B
C-B-A

の6つのパターンがあります。

これを順列といい、一般化するとN個のストラテジーの順列はN!(Nの階乗)通りあります。

N!は『Nから1ずつ引いたものを1まで掛け合わせる』ことで求められます。

上記は3!=3×2×1=6通り、というわけです。

私はこのマルチストラテジーの順列のうち、

・ドローダウンが最も小さく
・出来れば合計利益がそこそこある

この条件に出来るだけ当てはまる順列を探したいと考えました。

そこで、マルチストラテジーの順列をすべて検証し、
最も条件に合うものをしらみつぶしに探せば良いのでは?と考えました。

これを”順列の総当たり検証”と呼ぶことにします。

しかし、このやり方、実はカーブフィッティングが起こる可能性を含んだやり方なのです。。。

例えば、順列の総当たり検証で求める解がB-C-Aだったとしましょう。

この場合、

『たまたまBのドローダウンのタイミングでCが莫大な利益を上げており、ドローダウンが防げている』

といったような偶然が起こる可能性があります。

前回までの個別ストラテジーでは、パラメータ設定の際に、傾向などをを深堀りし、根拠を把握することを学びましたが

これは、マルチストラテジーの順列を選ぶ際にも、同じ事が言えるのです。

例えば、

「Bの損失の出るタイミングとCの利益が出るタイミングは一致しやすく、その利益率には逆の相関関係があり、どのような相場でも、BとCは利益・損失を補完しあえる」

といった事が確認出来てあるのであれば

「BのドローダウンをCの利益で相殺し防げているのは妥当性がある」

と言え、この順列はカーブフィッティングにならないと言えるでしょう。

そういった考察をせずに、順列の総当たり検証をして最適なマルチストラテジーを探すやり方だと、どのような事が起こるでしょうか?

このケースだと、たまたま検証上では上手くBの損失をCの利益で相殺出来ただけかもしれません。

すると、今後の運用でBの損失(ドローダウン)だけ起こり、この時Cでは目立った利益は出ず、想定外のドローダウンを食らうというわけです。

要は、この順列の総当たり検証は、パズルを絵柄を見ずに総当たりで合うものを探す作業を行っているようなものです。

更に、ストラテジーの数が10個、20個と数が増えると順列による最適化もしやすくなりますし、各ストラテジーのポジション量、レバレッジを調整すると、幾らでも理想のマルチストラテジーに近づける事が出来てしまうでしょう。

もちろん、そういった作為的なマルチストラテジーが期待通り機能する事はあり得ませんので、実運用すると、様々なトラブルに見舞われるでしょう。

では、どうすればいいかですが、私はシンプルに

・使いたいストラテジーの順番に並べる
・マルチストラテジーの検証結果を確認し、数値を把握
・ドローダウンが起きている部分について、その原因となるストラテジーを調べ、ポジション量を少なくしてドローダウンを小さくする

基本はこのぐらいで簡単にやる事をおススメしています。

マルチストラテジーにおいても、”なぜその順列やパラメータ設定が良いのか”という根拠を深堀していく事に変わりはありませんが、個々のストラテジーの調整よりもはるかに複雑なのであまり深みにはまらないように気を付けましょう(笑)

では、これでカーブフィッティングのお話は終了となります。

次回、お楽しみに!

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夢幻

平均年利100%以上を叩き出し、今なお資産を増加し続ける現役の専業システムトレーダー。 会社員時代は投資教育会社の統括マネージャーとして、成果を挙げた個人投資家やプロトレーダー、ファンドマネージャーなどに数多く会い、様々な実践トレードの手法を学ぶ。 斉藤正章氏や西村とも古くから交流があり、「システムトレードの達人」を開発当初から愛用している。 退職後は、当時の資金500万円のうち100万円を設備投資に使い、資金400万円で専業トレーダーに転身。 トレードの利益から生活費を捻出するため、当初は、資産がなかなか増えていかない状況が続くも、「システムトレードの達人」を使い独自の投資手法を構築することで、本格的にトレードを開始した2013年以降は年利回りが50%下回ることがないという安定した実績を残している。