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夢幻です。
前回、オーシャンゲート社のタイタニック号見学ツアーの事故についてお話しました。
5人もの命が失われた潜水艇の圧壊事故の原因はどこにあるのか・・・
事故を決定づけるタイタンの5つの破片が見つかり、タイタニック号が沈んでいる3650メートルよりもずっと浅い2740メートル付近で圧壊(水圧による破壊)という事故が起こった事から、
運営するオーシャンゲート社の安全面への管理体制に問題があったのではないかと報じられています。
実際の破片の引き上げも無事に進んでおり、実際の原因究明にはこれらの破片の鑑定だけでなく、オーシャンゲートの関係者への聞き取り調査なども含め行われるようです。
さて、前回はオーシャンゲート社のCEOでこのタイタンの乗員でもあった
ストックトン・ラッシュ氏(上の画像)のルール破りの思想が背景にあるのではないかという考察でした。
この人物を調べてみると、ちょっと驚くことが分かりました。
それは、歴史に名を残したいと考え様々なチャレンジをしてきていたようですが、
一方で、極度のリスクテイカーだという事です。
それを象徴するような発言を過去にしていて、ブルームバーグの記事によると
「ただ安全でいたいなら、ベッドから出ず、自動車にも乗らず、何もするなという意味だ。ある時点で、人は何らかのリスクを負うことになるだろう。全くリスクとリターンの問題だ」
と言っており、
「安全は全くの無駄だ」
とも語っていたそうです。
この考えが非常に恐ろしいのは、日々ドローダウンと戦いながら運用を継続している皆さんなら理解出来ると思います。
もし、トレードに置き換えるなら、
「そこに誰も得たことのないような高い報酬があるなら、破産覚悟はもちろん、時には自分の命すらもなげだすべきだ」
と言っているようなものです。
ちょっと極端すぎますし、当然ながら我々はそうではないはずです。
一方で、ラッシュ氏自身は、自分が名を残すためなら本気で命を賭けても構わないと考えられる人だったのかもしれません。
他の乗客は、彼のこういった根本にある思想をどこまで『本気』で理解出来ていたのでしょうか・・・
それが伝わっていたのか、それとも上手く取り繕っていたのか?
そして、それは様々な部分でこのツアー運営に垣間見る事が出来ます。
前回取り上げたように、ボディに適していないカーボンファイバーとチタンの合成でタイタンは作られ、専門機関の安全性についての認証試験を受けずに行っていました。
そして、他にも様々な規制(ルール)をかいくぐって運営されている事が明らかになってきました。
例えば、実験用の潜水艇でツアーを行っていたこと。
商業でのツアーだと認証試験が必要なので、調査や研究用に作られた船で乗員も名目上は研究員というような形で同行し、このツアーも「調査旅行」で運行されていたようです。
普通の営業では、試験をクリアせずに人をのせる事はNGですが、実験用の潜水艇を使う事でこの規制を回避していました。
また、他にも、ツアーが出来た理由として、タイタニックが沈んでいる場所が「公海」だったこと。
公海とはどの国の領海にも属さない海の領域であるため、国の監視の目が行き届きにくいという事です。。
また、ツアーの潜水艇が行方不明になってから、このツアーのPR動画の問題点が話題になりました。
それは、タイタンの設計とエンジニアリングに米航空機メーカーのボーイングと航空宇宙局(NASA)、ワシントン大学が協力したと説明しており、これをPRしていましたが、実は3団体とも協力関係にはなくこの事実を否定しています。
今回、これらを俯瞰してみると、安全面でもツアーの運行でもPRの方法でも、ストックトン・ラッシュ氏のルール破りの思想が根っこにあり、それを曲げずにツアーを実現させようとして様々な規制を掻い潜っていた事がわかります。
この一度ルールのルール破りを成立させようとして、どんどんルールを破っていくというか、グレーなやり方に進んでいってしまう心理はトレードの現場でもあると思います。
システムトレードの運用中でも、損失に耐え切れずポジションを切ったり、仕掛けを躊躇したりと、ルールを破ってしまう事も誰しも一度は経験ある事と思いますが、問題はその後の対処です。
それは、一旦ルールを破ると、その後に
ルールを守る事に対する意識が甘くなる、
ルールを破る事への罪悪感が少なくなる
事です。
絶対にルールを守り運用する!と固く決めていても、迷ってどこかでルールをいったん破ると、もう一回破ってしまったし、いいか、とルールに甘くなってしまう事は経験した事があると思います。
そのような時こそ、一つのほころびから、穴が大きく広がり、致命的な損失になってしまう事も良くあります。
ルールを破ってしまった後、ルールへの意識が低くなる場面がある事を意識して、上手く立て直すよう心がければ、ミスの連鎖も防げると思います。
では次回もお楽しみに!
参考:文中のラッシュ氏のブルームバーグの記事(画像引用元)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-06-21/RWMIILDWRGG001
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