相場を「冷ます」戦略とは? 米騒動から学ぶ市場操作の裏側



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こんにちは、夢幻です。

先週の日経平均株価は、先週末比224円安の37,965円で引けました。
少し調整局面に入っていますが、比較的軽い調整で済みそうですね。
アメリカ市場のNYダウも底堅い動きを見せています。

ただ、気になるのはトランプ大統領とイーロンマスク氏の動向です。
マスク氏は、トランプ大統領が返り咲きの中核を担った立役者だったはず。
それだけに、ここまでの仲違いは予想外だったのではないでしょうか。
トランプ氏が孤立して暴走しないか、少し心配ではあります。

さて、最近私が特に興味を持ってみていたのが、
「令和の米騒動」です。

昨年から日本の主食であるお米の価格が、なんと2倍近くに上昇し、
直近では5kg5,000円近くまで高騰していました。

いくら物価が上がっているとはいえ、
これほど短期で上昇するのは不可思議な動きです。
直近の米価格の上昇により、流通が滞ってしまったのでしょう。

当然、流通の業者も米の現物を長く保持していた方が儲かるのであれば、
市場に出し渋るというのはあり得る事です。

そんな中、江藤農林水産大臣の更迭によって、
後任に小泉進次郎氏が抜擢されました。

ここで、進次郎氏が取った戦略が、
政府が持っている備蓄米を随意契約によって、
安く市場に流通させるという事でした。

随意契約とは、政府と販売業者が直接契約し、
流通価格まで政府が決めて販売業者に備蓄米を売るという販売方式です。
これまでの備蓄米は入札方式で、高い値を付けた業者が落札していました。

しかも、今4,000円台後半で推移している5kgの米を、
およそ半値の2,000円台で流通させたのです。

そして、農林水産大臣就任からわずか2週間足らずで、
イオンやドン・キホーテなど大手スーパーを中心に販売され、
それが連日メディアで大きく報道される運びとなりました。

相場に明るい皆さんなら、
これがいわゆる「冷やし玉」の戦略であることはすぐにわかると思います。

冷やし玉とは、要は過熱した相場を落ち着かせるために、
まとまった売り注文を出して価格を抑制することです。
主にIPO(新規上場)相場などで用いられます。

具体的には、値が暴騰してしまったIPO銘柄に、
主幹事証券が大株主から一時的に株を借り、
一度に大量の株を放出(高騰した株価にぶつける)します。
すると、大量の売り注文に上値を追っていた投資家は狼狽して値崩れを起こし、
価格が反転することで急激な上昇は収まります。

その名の通り、「相場を冷ます玉」と言う事ですね。

当然、古くなった備蓄米とはいえ、ここまで安いと、
品質より価格を重視する層は備蓄米に大量に流れることになります。

ただ、これにも批判の指摘はありました。

・入札方式から随意契約に変えると政府の売値は安くなる。法的に問題ないか?

・そもそも数年たったら家畜の餌として再利用する米なのだから高すぎるのでは?

・備蓄米を安く出せると言っても数量には限度がある。無くなったらどうするのか?

ここでは、随意契約で安く備蓄米を放出することの是非はいったん置いておき、
この戦略が「冷やし玉」として上手く機能するかという観点において、
相場師目線で観てみます。

いくら安く備蓄米を出しても、
玉(備蓄米)には限度がありますから、
売り負ければ再度米価格は上昇してしまうでしょう。
例えば、米価格は一時的に備蓄米が安く流通しても品不足が続き、
備蓄米が尽きてしまうのが最悪のケースです。
実際に実弾には限りがあるので、これも懸念されていました。

しかし、進次郎氏は当初の批判もうまくかわし、
実際にこの冷やし玉が機能しつつあります。
今まで出てこなかった銘柄米も大量に流通し、
直近の米価格も徐々に下がりつつあるようです。

私が、この介入で特に「上手い」なと思ったのが、
メディアを上手く使った事です。

小口の米業者やコンビニを後回しにして、
大手スーパーに率先して備蓄米を販売しました。

これは、

・一度に大きな量を販売できる
・郊外店などが中心で、大量の行列が出来てもトラブルが起きにくい
という観点で秀逸だったと思います。

小口の小売店では店頭までに時間がかかりますし、
コンビニだと分散してしまってメディア露出のインパクトも弱くなります。
また、スペースも無いため行列が出来ればトラブルになります。

この点、イオンなどの大口スーパーであれば、
大規模な駐車場などがあり、並ぶスペースがあります。

だからこそ、1,000人単位で行列が出来ても対応でき、
労せずして大々的に備蓄米を安く販売する様子を、
メディアで流す事に成功しました。

そして、このメディアによって、
「米はもっと安く買えるもの」と国民に再認識させて意識を落ち着かせた事が勝因です。
これにより、銘柄米を出し渋っていた米業者も、
値を下げて流通せざるを得なくなったというのが、
直近の米価格が落ち着いた背景ではないかと思います。

こうして相場をコントロールする戦略は、
非常に面白いなと感じた次第です。

では次回もお楽しみに!

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夢幻

平均年利100%以上を叩き出し、今なお資産を増加し続ける現役の専業システムトレーダー。 会社員時代は投資教育会社の統括マネージャーとして、成果を挙げた個人投資家やプロトレーダー、ファンドマネージャーなどに数多く会い、様々な実践トレードの手法を学ぶ。 斉藤正章氏や西村とも古くから交流があり、「システムトレードの達人」を開発当初から愛用している。 退職後は、当時の資金500万円のうち100万円を設備投資に使い、資金400万円で専業トレーダーに転身。 トレードの利益から生活費を捻出するため、当初は、資産がなかなか増えていかない状況が続くも、「システムトレードの達人」を使い独自の投資手法を構築することで、本格的にトレードを開始した2013年以降は年利回りが50%下回ることがないという安定した実績を残している。