上場わずか11ヶ月で廃止!オルツ社の売上86%が架空だった「AIテーマ株」の闇



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こんにちは、夢幻です。

前回では、AI技術を悪用した「リアルタイム・フィッシング詐欺」を取り上げました。

AIがもたらす利便性の裏で、その“高速処理”が犯罪にも応用されている現実をお伝えしました。

AIは最強のパートナーである一方、悪用されれば最悪の敵にもなります。

サイバーセキュリティという「守り」を突破したAI時代の次の課題は、
「攻め」つまり投資テーマとしてのAIブームが、いかにして投資家を惑わせるかです。

今回取り上げるのは、まさにAIブームに乗って上場を果たしながら、
わずか1年足らずで上場廃止となった 株式会社オルツ(証券コード:260A) の事例です。

1. AIブームの中で上場した「夢の銘柄」

オルツは「パーソナルAIの実現」を掲げた国内スタートアップで、
「人の思考や人格を学習し、“デジタルクローン”を作る」というビジョンを打ち出していました。


(オルツのHPより引用)

主力事業はAI議事録作成システム「AI GIJIROKU」。
コロナ禍のリモートワーク拡大とともに導入が進み、
2020年の売上451万円から、2023年には38億円に急成長。

2024年10月、ついに東証グロース市場へ上場し、
「国産AIの星」として投資家の期待を一身に集めました。

2. しかし、それは“架空の成長”だった

上場からわずか半年後の2025年春、証券取引等監視委員会が調査を開始。
AI議事録サービスの売上の多くが、実際には存在しない“架空計上”であることが判明しました。

オルツは自社関係者や関連会社を通じて、法人契約を装った“自作自演の販売”を行い、
その費用を自社資金で裏から支払っていました。

さらに、広告代理店などを経由させて資金を循環させ、
あたかも実際に取引があるかのように見せかけていたのです。


(日本経済新聞のニュースより引用)

この「循環取引」によって、帳簿上の売上は膨張。
上場直前には売上約119億円のうち、実に86%が架空だったとされています。

仕組みはこうです。

1.自社サービスを販売パートナーに“販売”し、売上を計上する。
2.そのパートナーに対し、「広告宣伝費」や「研究開発費」などの名目で同額を支払う。
3.資金を循環させることで、取引があるように装う。

これにより売上と費用が同時に増え、成長しているように見せかける・・・典型的な粉飾スキームでした。

不正を疑った旧監査法人を外し、“協力的な”監査法人に変更。

さらに、グループ会社や外部委託スタッフを巻き込み、
法人契約を装って料金を会社側が肩代わりするという偽装まで行われていました。


(時事ドットコムのニュース記事より引用)

そして2025年4月、監視委員会の強制捜査が入り、
同年7月に上場廃止が決定。事実上の倒産に至りました。

AIの輝かしい成長ストーリーの裏で、そこにあったのは数字の幻影だったのです。

3. なぜ誰も気づけなかったのか

理由は単純であり、しかし根深いものです。

AIは時代の主役であり、「疑う余地のない正義」として扱われていました。
その熱狂の中で、「実態のない期待」を利用して資金を集める企業が現れた、それがオルツです。

AI関連事業は専門性が高く、外部からは実態を判断しにくい。
監査法人や取締役会でさえ、数字の裏付けを深く検証できませんでした。

さらに、オルツは「世界初のデジタルクローン」「ノーコードAI開発」など、
響きの良いキャッチコピーを連発。
報道やSNSを通じて拡散され、その“ストーリー性”がAIバブルを後押ししました。

4. 投資家が学ぶべき3つの教訓

この事件はAIそのものを否定するものではなく、
「投資家の検証力」を問う出来事です。

(1)“テーマ”と“実績”を混同しない
AI関連というだけで将来性を過信しない。
売上・顧客・利益率など、数字で裏付けられた成長かを見極める。

(2)監査体制・ガバナンスを重視する
特に上場直後のベンチャーでは内部統制が脆弱。
監査法人・社外取締役の構成、開示書類の質を確認すること。

(3)物語より「ファクト」を見る
AI、宇宙、再生医療など“夢のあるテーマ”ほど過大評価されやすい。
“未来の希望”よりも“現在の現実”を直視する姿勢が必要です。

5. 熱狂の中にこそ「冷静さ」を

AIは社会を変える革新的な技術であると同時に、
その言葉自体が「粉飾や詐欺を正当化する免罪符」にもなり得ます。

求められるのは、「AIを信じる力」と「AIに騙されない力」。
過去にも、バイオや宇宙関連株で似たような事例は繰り返されてきました。

市場が熱を帯びるときこそ、投資家に必要なのは“冷静な視点”です。

では次回もお楽しみに。

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夢幻

平均年利100%以上を叩き出し、今なお資産を増加し続ける現役の専業システムトレーダー。 会社員時代は投資教育会社の統括マネージャーとして、成果を挙げた個人投資家やプロトレーダー、ファンドマネージャーなどに数多く会い、様々な実践トレードの手法を学ぶ。 斉藤正章氏や西村とも古くから交流があり、「システムトレードの達人」を開発当初から愛用している。 退職後は、当時の資金500万円のうち100万円を設備投資に使い、資金400万円で専業トレーダーに転身。 トレードの利益から生活費を捻出するため、当初は、資産がなかなか増えていかない状況が続くも、「システムトレードの達人」を使い独自の投資手法を構築することで、本格的にトレードを開始した2013年以降は年利回りが50%下回ることがないという安定した実績を残している。