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From;田村祐一
私には、非常に素晴らしいトレーダーの友人がいます。
彼は2018年2月に長年勤めていた会社を辞めて、専業トレーダーになり悠々自適に生活しています。
そんな彼と先日食事をしたのですが・・・
彼は、1~3日程度の短期トレードを中心に行っているのですが、ここ7年間は負けなしで資産を大きく増やしているトレーダーです。彼のトレードを実際に見たこともありますが、本当に素晴らしいトレーダーだと尊敬しています。
そんな彼は、2018年2月から長年貯めた運用資金〇千万円を元手に専業トレーダーになりました。
食事の中での会話の話題はやはり、「専業トレーダーになってみてどうか?」に尽きました。専業トレーダーはサラリーマンからすると社会のしがらみから解放されていると感じさせるような憧れの存在です。ましてや、彼のトレードテクニックは素晴らしいことは十分承知していますので、当然うまくいっており、楽しい話がたくさん聞けると思っていました。
ただし、彼から帰ってきた言葉は、、、
「専業トレーダーにならなければ良かった」
でした。
うまくいかない原因は?
どうやら、専業トレーダーに転身してから、運用成績がパッとしていないようなのです。株式投資を行っているあなたであれば共感してもらえるでしょうが、たしかに、2018年は動きの少ない難しい相場でしから、彼の運用成績が奮わないのは仕方がないことかもしれません。そう思った私は、奮わない原因を「相場が悪かったこと」だと伝えたところ、どうやら彼は、相場のせいではないと考えているようです。
彼が自己分析をして、導きだした原因とは、なんでしょうか?
答えは、「専業トレーダーになったこと」でした。
これは、不思議です。
専業トレーダーであれば、株式投資に割くことのできる時間が圧倒的に増え、より彼の運用成績が上がるように思えます。ただし、そうではないようなのです。より詳しく原因を聞いてみると、【心に余裕がなくなった】ことが大きな原因のようです。
専業トレーダーに転身したことで、手元にある運用資金を元手に、毎月の自分の生活費を稼がなければならなくなりました。これは、当たり前のことなのですが、これが彼に対して、想定以上のプレッシャーになったようです。毎月利益を出さないと、自分の運用資産が減少してしまうという恐怖が重くのしかかり、兼業トレーダー時代にはありえないミスを連発してしまったそうです。
例えば、
・迷わず逆張りで買い付けするチャンスで、損をするかもという恐怖から発注できなかった
・本来なら絶対損切りするタイミングで、もう少し待てばという疑念がよぎり、手仕舞いを遅くして損をした
・大きな利益を狙うために、いつもよりも1銘柄に投資する金額を増やしてしまった
・もう少し保有を継続すれば利益が増えそうな銘柄なのに、怖くてすぐに手仕舞いしてしまった
など、あげるとキリがないようです。少なくとも私の知っている兼業トレーダー時代の彼であれば、上記のようなミスはしないと断言できます。
専業トレーダーは、兼業トレーダーと比較して、株式投資に割く事ができる時間が多いという圧倒的なメリット持っていますが、その一方で、大きなデメリットも抱えています。
それは、「毎月の定期収入がない」ということです。
兼業トレーダーは、毎日仕事していることから、毎月決まった日に決まった額の給料がもらえます。給料の範囲内で生活でき、投資はあくまでも副収入的な役割でしょう。そして、ボーナスなどが入れば、仮に投資で損を出しても補填することも出来ます。
一方で、専業トレーダーは、毎日トレードしたとして、毎月決まった金額が得られるわけではありません。稼げない月は生活費を捻出するために貯金を切り崩します。場合によっては、株式投資で損失を被るリスク月もあるでしょう。被った損失は、再度株式投資でしか挽回することが出来ません。
専業トレーダーと兼業トレーダーでは、安定感に圧倒的な差があるのです。兼業トレーダーであれば、株式投資が上手くいかなくても、生活していくことは十分に可能です。しかし、専業トレーダーは、株式投資が上手くいかないと、生活することが出来なくなってしまいます。
この差が、彼が専業トレーダーになった途端、運用成績が悪化した要因のようです。心の余裕があったからこそ、トレーダーとして彼の能力が最大限発揮できていたのでしょう。
実は、兼業時代は上手く行っていたのに、専業になった途端に上手く行かないというケースは、非常に良くあります。多くの方が、彼と同じ原因なのです。
私は、専業トレーダーを否定する気は、全くありません。しかし、専業トレーダーを志している人には、一度はこの警告をしたいと考えたのです。専業トレーダーは、誰しもがうらやむ環境ですが、それを維持するのは非常に難しく、イバラの道です。もし、専業トレーダーを目指している場合には、このデメリットについて深く検討されることをオススメします。
検討方法の例を挙げると、働いている間も、数ヶ月間、給与には一切手をつけずに株式投資の収支のみで生計を立てて、模擬実践をしてみるなども良いでしょう。
「専業トレーダー=不労所得で悠々自適」なんてことは、夢物語です。
P.S
苦戦していた彼ですが、今月11月から再就職し、働き始めたそうです。働き始めたら、急速に運用の調子が良くなったそうです。株式投資で勝つには、テクニックはもちろん重要ですが、メンタルのほうがさらに重要なのかもしれませんね。
―田村祐一
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田村 祐一



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